Hainaut Style Pale Ale : estenol 004 / エノー スタイル ペールエール : エステノール004
CRAFT BEER BASE Brewing Lab / クラフトビアベーススタイル | その他エール - Belgian Ale / ベルジャンエール |
ABV | 6.9% |
IBU | 20.0 |
Hainaut (エノー) はベルギー・ワロン地方にある州の名称。本作はエノー州で造られるセゾンビールの有名銘柄へのリスペクトを込めた。
Hainaut is a province of the Walloon Region of Belgium. This beer shows respect for famous saison beer blands of Hainaut.
2023年12月、CRAFT BEER BASE ではベルギービールの特集を行う。醸造部でもベルギー発祥の王道ビアスタイルをいくつか造ってリリースする。前回と前々回にリリースしたDubbel, Tripel はベルギーの「修道院」に起源を持つビアスタイルである一方、今作が深く関連するのは「農家」に起源を持つビアスタイルである。
そのビアスタイルはSaison。ベルギー・ワロン地方の人々が農作業の合間に飲んだという、まことしやかな逸話を持つスタイルだ。実際のところは労働者への日当や、収穫祭の祝酒など、様々な消費方法がなされていただろうと思われる。
Saisonの製法や風味の特徴だが、これが実に幅広い。他のビアスタイルと比べると最近まで (なんなら今でも) 各農家がそれぞれ独自のSaisonを造っていたからだ。麦芽は農家毎に焙煎や燻製の度合いが異なる処理が施され、ホップや他のハーブ・スパイスはその時期たくさん採れたものが使用されていた。醸造微生物には培養酵母だけではなく、周辺環境から採取した野生酵母も使用された。ときには家畜の寝床に着く乳酸菌も使用したかもしれない(ビールのpHを下げて保存性を高めるため)。
かようにSaisonは何でもありなので、私個人としてはSaisonをそれとたらしめるのは原材料や製法、風味ではなく、醸造アティチュードであるとすら思いたい。つまり極端なことを言えば、農家にならなければSaisonは造れないのだ。
それでも、私を含めた多くのビールファンがお手本と考えるSaisonの銘柄が存在するのも事実だ。ワロン地方エノー州はデュポン醸造所の『Saison Dupont』、同じくエノー州サン・フーヤン醸造所の『St.Feuillien Saison』が挙げられる。
これらエノー州で造られる二つの銘柄はアルコール度数 6-7%と高めながら、ドライかつ高炭酸で素晴らしく爽快感のある飲みロである。発酵由来のフルーティでスパイシーな香りは初めは個性的と感じるが、飲めば飲むほど癖になり、何度もグラスに鼻を近づけたくなる。どれだけ飲んでも飲み飽きることのない、常にともにありたいビールだ。
本作ではこの香りや味わいを今の自分の技術で表現しようとした。上記2銘柄の原材料や製法の本質的な部分を模したものではなく、農家のアティチュードを持って造ったものでもない。本作をSaisonと呼ぶかどうかは飲み手にゆだねることにしたい。
Batch #L18
Brewing/Tasting Sheet
Brewing Date 2022/12/06
Release Date 2023/01/25
estenol 004 - Hainaut Style Pale Ale
Beer Style: Belgian Style Pale Ale
ABV: 6.9 %
OG: 1.055
IBU: 20
SRM: 5
FG: 1.002
Grain Bill :
Pilsner Malt (78%)
Munich Malt (10%)
Wheat Malt (10%)
Cara Munich 30°L (2%)
Yellow Koji (Trace)
Yeast:
Lallemand Belle Saison (Saison Style Ale Yeast)
Hops:
Styrian Golding (Boil Start 2.0g/L)
Styrian Golding (After Boil 2.0g/L)
Water (ppm):
Ca 107, Mg 2, Na 15, C160, SO4 180
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Hainaut (エノー) はベルギー・ワロン地方にある州の名前。
本作『Hainaut Style Pale Ale』はエノー州で造られるセゾンビールの有名銘柄をリスペクトしたビールです。ビアスタイルはベルジャンスタイルペールエールとしました。
え、セゾンじゃないの?
という突っ込みが起きることはもちろん予想しています。しかし、セゾンと言えない複雑な思いがあるのです。
わたくし阿部はクラフトビール/世界のビールに魅せられて十数年。CBB醸造部ができるまでは酒屋である本店BASEの店長を務めたこともあり、数えきれない銘柄のビールを飲んできました。そんな僕がいまだに正体をつかめないビアスタイルがセゾンです。セゾンの銘柄を飲めば飲むほど、そしてそのルーツについて調べれば調べるほど、製法や風味がなんでもありのように思えてくる。それがセゾンです。
しかしながら、わからないなりに大好きなセゾンの銘柄はあります。それがベルギーエノー州のデュポン醸造所が造る『Saison Dupont』、同じくエノー州のサンフーヤン醸造所が造る『St. Feuillien Saison』です。
この二銘柄がなぜ好きかといわれると、ひとえに美味しいからです。香り、味、のど越しが好きなのです。もちろんその裏にある文化性とか製法にも大いにロマンを感じるのですが、それらのことについて調べたことがなかったとしても、僕はこの二銘柄の美味しさに心酔したことでしょう。
この大好きな二銘柄の香り、味、のど越しから、行ったことのないエノー州らしさを勝手に解釈して、自分なりに原料や製法を逆算して造ったのが本作『エノースタイル・ペールエール』です。
『Saison Dupont』や『St. Feuillien Saison』が代表的なセゾンの銘柄である以上、それらの味わいを表現しようとしたビールを(スタイルとしての)セゾンと呼ぶことは、今のクラフトビールシーンを見れば問題ないかもしれません。
しかし個人的にはやはりセゾンというビアスタイルを製法や味わいから定義するのは難しく、むしろ醸造アティチュードがより重要なのではないかと感じている次第です。
以上のことが本作をセゾンには位置づけず、ベルジャンスタイル・ペールエールという、より一般性のあるビアスタイルとした理由です。
あとは飲み手の解釈にゆだねることにしたいと思います。もちろんセゾンと考えていただいてもかまいません。
シートには書ききらず、さらに長文を書いてしまい恐縮です。
まずは飲んでみてくださいね。
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