#037 WA2 (KADOLABO)

伊勢角屋麦酒 / ISE KADOYA BREWERY
スタイルIPA - Hazy IPA / ヘイジーIPA
ABV8.5%
IBU-

0.0☆☆☆☆☆

本作「KADOLABO 037 WA2」は、かつてビールと「甘酒」の融合という未知の領域に挑んだ「020 WA」の実験的精神を色濃く受け継ぐリバイバル作品だ。前作で得た確かな手応えを起点としながらも、今回はさらなる高みを目指し、微生物たちの代謝メカニズムの深淵に踏み込んだ再設計を行っている。
日本の醸造文化の根幹を成す「麹菌(Aspergillus oryzae)」。彼らは単なるカビの一種ではない。自らの生命活動のために、100種類以上とも言われる多種多様な酵素を細胞外に分泌する「生きた酵素工場」だ。ビール醸造の観点から特に興味深いのは、デンプンを徹底的に分解する強力なアミラーゼ群(α-アミラーゼ、グルコアミラーゼなど)と、タンパク質を旨味成分であるアミノ酸へと分解するプロテアーゼ群の働きである。麦芽の持つ酵素力とは異なる、この特異な酵素群がもたらすダイナミックな化学変化こそが、麹を使う最大のロマンと言える。
本作のキーとなる「麹甘酒」は、この麹菌を繁殖させた米麹に温水を加え、酵素反応によってデンプンをブドウ糖(グルコース)へと糖化させることで生まれる。今回は、前回のプロセスから決定的な変更を加えた。それは「糖化プロセスの長期化」である。
温度管理下で、酵素が米の細胞壁とデンプン構造に作用する時間を大幅に延長した。これにより、米粒の物理的構造が徹底的に崩壊し、いわゆる「溶け」が極限まで強まることとなった。テクスチャーはなめらかになり、米由来のでんぷんが単糖へと還元され、同時にアミノ酸の抽出量も増大した。
さらに本作では、ベースビールの発酵を担う主役に、日本酒の吟醸酒の特徴香の1つであるカプロン酸エチルを豊かに産生する酵母を起用した。カプロン酸エチルはリンゴや洋梨、華やかな白い花を思わせる香りだ。これは、決して偶然の産物ではない。酵母の細胞内で営まれる緻密な脂肪酸合成経路(FAS: Fatty Acid Synthase pathway)の賜物である。
酵母は細胞膜を構築するために脂肪酸を合成するが、その中間代謝物である炭素数6の中鎖脂肪酸「カプロン酸(ヘキサン酸)」が鍵を握る。このカプロン酸が補酵素A(CoA)と結合してヘキサノイルCoAとなり、アルコール発酵によって生じたエタノールと出会う。ここでアルコールアセチルトランスフェラーゼ(AATase)という酵素が触媒として働き、エステル結合が形成されるのだ。

#037 WA2
スタイル:Ginjo Amazake Hazy IPA
モルト:Pilsner Malt, Wheat Malt, Carapils, Flaked Wheat
ホップ:Citra, Mosaic, Simcoe
酵母:LA3CEL
副原料:Rice Koji, Rice
Alc 8.5%

ブルワリー

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