新世界ニューロマンサー

Derailleur Brew Works / ディレイラブリューワークス
スタイルIPA - IPA (Indian Pale Ale) / アイピーエー
ABV7.0%
IBU31.0

0.0☆☆☆☆☆

大阪発祥と言われるミックスジュース(みっくちゅじゅーちゅの方がメジャーでしょうか??)をイメージした、ミルクシェイクIPAです。

ミックスジュースといえばの桃の缶詰で有名な黄桃・バナナ・ラクトースをふんだんに加え、小麦も使用。
甘さと苦味、嫌味のない香りを両立させたヘイジーなビールに仕上げました。

International Beer Cup 2018で銀賞受賞ビールです!

ミックスジュースIPA
原材料:麦芽/ホップ/黄桃/バナナ/乳糖
ABV:7.0 IBU:31 SRM:-

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イブ・ナオコ・ハートランドに捧げる
(1923/6/10〜2008/2/26)
そしてわたしは、いまも夢を見ているのだ、
忽布神のおぼろな影が、
わたしの歓びのうたを穿いてゆき、
露に濡れた枝木から溢れる光に照らされてゆくその先を。 ‐‐‐『しあわせな忽布農の歌』  イエイツ

エミリー・スコットは、数十年ぶりのニシナリの人混みを押し分けて、
隣接するエリア『シン・世界』の《チャット》のドアに入り込んだ。

彼女が見上げた2‐10郭(ツーテンカク・タワー)は何時まで経っても
放電を続けたままで。突き刺す空の色は、空きチャンネルに合わせたTVの色だった。 「もし、万が一。万が一だが、天然物の忽布(ノン・レプリカント・ホップ)ってものがあるんだったら」
《スプロール》調の声、《スプロール》調の立体光波(ホログラム)がバーカウンターの向こうから
エミリーに声をかける。
神経接続(コネクト)せず、直接にだ。この時代では珍しい。

カウンターの隣では、禁制品のホルモン誘因(トリガー)の取引を話し合っていた。
エミリーは《スプロール》調の声の持ち主が、差し出したビールに口をつけ、
カウンターに凭れながら、静かに目を閉じる。 「人造忽布大欠乏症になったみたいな、おれの体には、刺激が強すぎるだろうなあ。」
「嗅覚神経接続が、天然物の忽布に驚愕してやがる。電気海月に刺された気分だ」
《スプロール》調の冗談だ。ここ《歩日ARCA(アルカ・アルカ)》は筋金入り国外居住者用のバーで。
だからここで一週間飲み続けても、日本語はふた言と耳にしない。

隣の取引に夢中な男たちの話だから、本当かどうかはわからない。
ただ、神経接続せずダイレクトに嗅覚と味覚を刺激する甘美なビールは、
噂通り、人造忽布(レプリカント・ホップ)全盛のこの時代では貴重、そして違法(イリーガル)な、
天然物の忽布(ノン・レプリカント・ホップ)で作られているのかもしれない。

ほんの数十年前。
わたしが、この街でビールを造っているときには、当たり前だったホップ。
今や法を犯す都市伝説の存在になっていたなんて。
エミリーは軽く目眩を覚える。ビールに含まれるアルコール成分のせいなのか。
時間の流れに寂しさを覚えたせいなのか。彼女自身にも判断(ジャッジメント)がつきかねていた。 「イエローピーチとミルク。あとはノン・レプリカント・ホップ。あんたのケツのようなプリップリのイエローピーチだろう」
カウンターの端でグラスを抱えている少女。操作卓(コンソール)を経由してエミリーの共感覚幻想に直接語りかけてきた。

わざわざご丁寧な解説、感謝するわ。
30年前なら、一夜限りの恋に誘われているのか、勘違いするところね。
共感覚での返事は好きではない。エミリーは口を少し歪め、没入(ジャックイン)する。

少女はフードを被ったまま、表情を悟らせることなく、頷く。
エミリーは、甘美ながらも刺激が強めのビールを飲み干し、
筋金入り国外居住者用のバーから退散することにした。
少し酔ったのか、エミリーは、自分の汗の据えた匂いを嗅ぐ。

バーを出て、2-10郭(ツーテンカク・タワー)を改めて見上げる。
そろそろ、決着をつけないと。
エミリーは自分にそう言い聞かせ、電磁ピストバイクに跨がろうとした。

エミリーの前に、さっきの少女が立っていた。14秒前には誰もいなかったのに。
彼女は少女に語りかける。
特注電脳空間デッキに私の意識を没入(ジャックイン)させたのね。あなた。
だけど、目上の人と話をしたいのなら、顔を見せなさい。
それが礼儀というものよ。

少女は頷き、だがその提案には答えず、矢継ぎ早に呟いた。
「もうこれ以上、大事な人を失いたくないの。自分。」
「あなたには、まだ生きていてほしい」
「このレイルは、死にゆく運命のレイル。あなたには乗ってほしくない。」 「レイルは誰かが敷いたものじゃない。」
「いつだって、自分でレイルを選んできたわ。もし間違ったレイルなら、そこから降りればいいだけよ」
エミリーは静かに微笑んで、最後に一言付け足した。 「今年最後の花火(ファイアクラッカー)を見に来ただけよ。安心なさい。」
ニューイマミヤ駅に、南海電磁鐵道(ナンハイ・レイルウェイ)の電磁蒸気列車が停車したのか。
ブレーキ用の逆噴射蒸気(バックスチーム)がけたたましく、二人の会話を割っていった。

ブルワリー

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