Under Pressure / アンダー プレッシャー (KADOLABO)

伊勢角屋麦酒 / ISE KADOYA BREWERY
スタイルスタウト - Imperial Stout / インペリアルスタウト
ABV11.5%
IBU-

0.0☆☆☆☆☆

KADOLABO 036 Under Pressureは素晴らしい品質のコーヒーを大量に注入した濃厚なバーボンバレルエイジインペリアルスタウトだ。ビールをキャンパスに、コーヒーを最大限表現しようと試みた。京都 Direct Coffeeのオーナーバリスタであり、数々のコーヒーコンペティションで受賞を重ねる、スペシャルティコーヒーのトップランナーであるMAMEの日本初出店店舗 KURO MAMEの店長を務める西尾逸平氏の監修のもと製造した。

このビールは、先日、ISEKADOブランドでリリースしたBourbon Barrel Aged Shadowplay(以下 Shadowplay)をベースに、エスプレッソを注入したものである。
ShadowplayにもUnder Pressureにも同じMAMEが焙煎したゲイシャのコーヒーを使用している。ストロベリーやラズベリーのキャンディを思わせるフルーティな香りと爽やかなキレのよい酸味が特徴的なコーヒー豆だった。粉砕した直後の香りの広がりは素晴らしく、粉砕室に入るたびに笑みがこぼれるくらいだ。
ShadowplayとUnder Pressureでは同じコーヒー豆を使用しているが、使用した量と方法が異なる。Shadowplayは、このコーヒー豆を細かく粉砕したものを用い、ステンレスタンクの中で1~3年熟成のバーボンバレルエイジスタウトでコールドブリューしたものだ。従来 ISEKADOで取り組んできたコーヒービールは、コーヒー豆をそのままビールに漬け込むコールドブリュー法で行ってきたが、今回は粉砕し、しかも量を5倍近くも使用したため、体感で10倍を超えるコーヒーのキャラクターをビールに移しこむことに成功した。
とはいえ、あくまで冷温常圧抽出であり、臨界点がある。その濃度はたかが知れている。濃さの極地を目指し、Under Pressureは、このShadowplayをベースに、エスプレッソを1瓶あたり3杯分もの量を注入した。コーヒー豆の総使用量換算でいうと、従来のコーヒービールの16倍にも達する。
エスプレッソは、コーヒーをもっとも濃く抽出したものである。加圧抽出においては、コーヒー粉へのお湯の浸透、そしてコーヒーの成分のお湯への移行が促進されることで、常圧抽出に比べて、圧倒的に”濃い”コーヒーが得られる。
Under Pressureに使用するエスプレッソは西尾逸平氏に落としていただいた。使用した量は何と400ショット。繁盛店でも1日にこれほどの数のエスプレッソは出ないのではないか、と思うほどの量だ。連続稼働で約6時間半かけて、抽出した。出来上がったエスプレッソは、非常に濃厚で、コーヒー豆の特徴香のラズベリーやストロベリー、そして果実を連想させる爽やかな酸味に満ち溢れていた。

Shadowplayにエスプレッソを添加したのちのテイスティングでは、圧倒的な特徴香の発現に驚いた。そしてその濃度の高さをバレルエイジスタウトが受け止め、飲み口はなめらかだ。今まで体験したことのない不思議な液体が出来上がった。

テイスティングから、仕上げには少量の窒素も封入して仕上げることを決めた。コーヒーの酸味を、窒素が生み出すクリーミーなまろやかさでバランスするためだ。今回のコーヒー豆は収穫後に窒素充填し、嫌気性発酵されていたそうで、なんだか味のある話だ。

今回のコラボレーションを通して、コーヒーの考え方が、現代のアメリカンスタイルのビールの醸造と重なるところがあり、非常に面白く感じた。現代のアメリカンスタイルのビールをけん引しているのはもちろんHazy IPAだ。ビールというキャンパスの上に、いかにホップの魅力的なキャラクターを表現するか、ということに重きが置かれている。良い品質のホップを調達し、そのキャラクターを活かせるよう、麦汁や発酵のデザインをして、ドライホップでホップの成分を抽出する。一方、コーヒーでは、良い品質の豆を調達し、その魅力を引き出せるよう、焙煎・抽出を行うそうだ。
エスプレッソの加圧抽出という方法は、コーヒーの成分を常圧よりも濃く引き出す。その分、雑味も出やすいわけだから、より豆選びと焙煎が重要になる。
同じようにビールでも、より濃く仕上げようとすれば、雑味の少ないホップを選び、そしてベースとなるビールのコントロールも求められる。
ドライホップにおいては、エスプレッソほどの圧力をかけることは、設備特性上困難であるが、ヘッドプレッシャーによって抽出度合いが、実は変化しているのかもしれない。これは次の宿題にしておこう。

最後にこの素晴らしいコラボレーションの機会を設けてくれた今井泰智氏に厚く御礼を申し上げる。ありがとう。

#036 Under Pressure
スタイル:Bourbon Barrel Aged Imperial Stout w/ Coffee and Vanilla
モルト:2row, Pilsner, Crystal, Chocolate malt, Roasted Barley, Black malt
ホップ:Hop Flow, Aged Hops
酵母:American Ale
副原料:Sugar, Lactose, Geisha Espresso, Geisha coffee beans, Vanilla
Alc 11.5%

ブルワリー

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