041 Marginal Ⅵ / マージナル 4 (KADOLABO)

伊勢角屋麦酒 / ISE KADOYA BREWERY
スタイルその他 - Saison / セゾン
ABV2.0%
IBU-

-☆☆☆☆☆

KADOLABO 041 Marginal Ⅵ は、自社で単離した野生酵母のブレンドで発酵させた ABV 2% のテーブルセゾンに、Pichia kluyveri の培養液を混和して仕上げたビールである。

Marginal は、ビールとワインの境界を探るシリーズだ。これまでの5作は、ビールにブドウを持ち込み、ワインの側からビールを見るという作り方をしてきた。白ブドウ、赤ブドウ、オレンジワイン、ロゼとひととおり回るなかで、ひとつの結論が出ている。ワインの要素をビールに持ち込むなら、アルコールは高いほうが収まりがよい。前作 027 Marginal Ⅴ は ABV 12% だった。本作はその逆に振っている。

発端はローアルコールである。市場の関心がそこへ動いているのは間違いなく、我々も作れるようになりたい。ただしビールでアルコールを下げると、たいてい薄くなる。エタノールは酔わせるだけの成分ではなく、香りをまとめ、苦味の角を丸め、口の中に輪郭を作っている。抜けば香りは散り、苦味は尖ったまま残る。

そこでワインを参照した。辛口のワインには糖がほとんど残っていない。それでいて飲めば厚みがある。ワインはボディを糖で作っていないということだ。ビールはボディを残糖で作る。酵母が食べきれない糖を意図的に残す、ほぼその一本道である。ワインがやっているように糖以外で厚みを出せないか。それが本作の問いだった。

Pichia kluyveri は、我々がふだん使う Saccharomyces とは属から異なる酵母である。ワインの香りを引き出す目的で使われ、近年はノンアルコール・低アルコールのビール向けにも製剤が出ている。マルトースを資化しないためアルコールをほとんど作らず、それでいて発酵由来のエステルを強く出す。ノンアルコールビールがわずかな発酵でビールらしさを持てるのはこの性質による。本作が期待したのはもうひとつの側面で、この酵母がグリセロールを多めに作るという報告である。グリセロールはとろみを持つ成分で、口当たりに厚みを与える。アルコールを上げずに厚みだけを足す。それが狙いだった。

主発酵は自社の野生酵母である。伊勢の倭姫宮近くに立つカシの木の樹液から、東京の旧新橋停車場のあたりに生えていた木瓜の実から、そしてカカオ豆から採取した株を組み合わせている。10年以上かけて約20株を単離し、商品に使えたのは4株である。このブレンドは定番のヒメホワイトのために開発したもので、主役に据えた株の発酵の遅れを、残りの株が支える配合になっている。本作はそこから継代した。

麦汁は、高重力で仕込んだペールエールの最後に流れてくる薄い麦汁を用いた。補糖して 4.2°P に調整している。本作が 2% なのは麦汁が薄いからであり、Pichia kluyveri のせいではない。マルトースを食べないのは Pichia のほうで、自社の野生酵母は普通に食べる。このアルコールを作ったのは野生酵母である。

ホップには Mosaic と Nelson Sauvin を合わせた。Nelson Sauvin はニュージーランドで育成された品種で、白ワインのソーヴィニヨン・ブランを思わせる香りで知られる。ビールとワインの境界を探るシリーズに、ホップの側から同じ問いを持ち込んだかたちである。

Pichia kluyveri はシラーズの果汁で2日間培養し、発酵中のビールへ2%だけ混和した。この酵母は酢酸エチルを大量に作る性質があり、低濃度なら軽い果実様だが、濃くなると除光液を思わせる刺激臭になる。仕込み前の試験で繰り返し観測していたため、配合率を抑えた。

結果として、狙っていた厚みは出なかった。仕込みののちにラボで条件を振って調べたところ、この酵母にグリセロールを作らせるには培養のしかたを変える必要があることが分かっている。次の仕込みへの宿題である。

外観は、ビールでなかなか見ないほど淡い。麦わら色を超えて、わずかに肌色を思わせるところまで来ている。グラスに注ぐとスパークリングワインのように勢いよく泡立ち、泡はすぐに消える。香りと味わいはバナナ、洋ナシ、グースベリー、グレープフルーツ。フルーツ系のノートにややスパイシーなフェノールが乗り、その奥に黒ブドウの皮や茎を思わせるポリフェノール感が重なる。

低アルコールにありがちな水っぽさはない。香りと味の強さは通常度数のビールに引けを取らないが、香り抜け・味抜けがよく、さらりと飲み進められる。炭酸を高めに仕上げているため口中での香りの広がりも大きい。昼から飲める、力の抜けた一杯である。食事に合わせやすく、食中を通して飲み続けられる。

KADOLABO 041 Marginal Ⅵ
Table Saison ABV 2%

Malt
2row, Carapils
Hop
Mosaic, Nelson Sauvin
Yeast
Wild Yeast Blend, Frootzen
Sub
Shiraz Juice

ブルワリー

このブルワリーの他のビール

おすすめのビール